くちなし、ゆり、、、は孤独を思わせる香りだわ。
くちなしの前を歩きながら、カレンは言う。
そういわれると私もそう思う。
彼女とはサラソタに帰る飛行機の席が隣りで仲良くなった。
とても素敵な布のバッグを持ってらしたので、いいですね、っていうと、彼女は自分で作ったという。
あいにく飛行機の便がキャンセルになり、デトロイトで1泊することになり、
同じホテルに泊まり、バーで飲みましょう、なんてことになった。
カレンは60代で、昔は教師で、45歳のときに離婚した。
化粧っけのないお顔は、いつも笑っているような感じだったけど、離婚の話になったら少し顔がゆがんだ。
通っていたジムにくちなしの花がいっぱい咲いていて、その香りに、
あたしはひとりでも寂しくないわ、って思った。
くちなしの香りがあまりにも凛として、
連れて行かれてしまったの、
ってカレンは笑った。
くちなしのジムは、私が最近通い始めたプールのあるジムなのです。
偶然ですね、じゃぁ、今度一緒にいきましょう、ということになった。
彼女はここにもう15年も通っている。昔は病院と近くの学校、消防署、警察の職員がトレーニングのために通うジムだった。
くちなしが咲き始めた頃で、彼女は胸いっぱいに香りを深呼吸、
今はジムより、キルティングが毎日の楽しみで、
恵まれない赤ちゃん達にあげるのだそうだ。
南アメリカの季節労働者には古いTシャツをリサイクルして、キルティングの座布団を作ってあげる。トラック移動の際に、座るのはたいていトラックの後ろだから、何かしかないとお尻が痛いらしい。
毎日忙しいし、楽しいし、あ~人生って最高。ねえ、そう思うでしょ?
私は、わからないけど、きっと最高なんだと思います、と答えた。