2011年7月25日月曜日

古い町の物語



ベッド&ブレックファストの料理担当のサミーは小太りでフレンドリーなおばさん。
テキサスで生まれ、ガテマラに8年住み、フロリダのキーウエストに住み、なぜか今はここ。
ふたつの通りをへだてた、笑い顔の家に住む。

ボニフェィはタイムマシンで行くような町。
何もかもが古いが、
古すぎて捨てられた建物にベッドを持ち込んで、
許可なく寝泊りする、ってのが、すごい。

「電気がないから、昼は暑いけど、今頃から涼しくなるのよ。どうぞ、入って。」

薄暗いコンクリの部屋に彼女がろうそくを灯した。
部屋はベッドとソファがあるだけ。
キリストの絵の大きな瓶のろうそくがいくつも揺れて、
壁の悪魔払いのシンボルなどが浮かび上がった。
友達が刺青でいれたのを見たことがある。

「あなたベジタリアンって言ったわね。明日の朝食も、今日みたいに、フルーツとサラダでいいの?」
「いいわよ。ベジタリアンってわけじゃないんだけど、最近、自分の体内をクリアにするダイエットを試しているの。」
と、私が答えると、
彼女は体内のシステムをクリアにする方法を話し始め、止まらん。
自分も食事療法で心臓を直そうとしているのだそうだ。
彼女は生まれつき、内臓に欠陥が多く、
10歳まで生きられないと、医者に言われた。
が、私は生きるのだと念をこめて毎日生きた。
そして40歳の今日まで生きている。だから、彼女は念の力を信じる。
で、
20歳の誕生日に、腎臓の一部が完全によくなる夢を見て、
それが本当になり、ヒーラーの「宣告」を受けた。
以来、毎晩、毎朝、神との会話があるのだそうだ。

会計の仕事をしていたけれど、すい臓が悪くなり、失業者保険で食べていくことになった。
保険は毎月6万円しかなく、生活費の低くてすむガテマラに移住し、療養生活を8年続け、メイドの若い娘が、前世で自分の娘だった、と、彼女を養女にし、家族をもった。
かなりの回復で、歩けるようになり、夢で見たビーチの近くの家をフロリダに見つけ、そこにメイドで住み込んだ。

ある時、
ヒーラーのウエブサイトで、
あ落馬で右足首と右肋骨が痛くて立てない人がメッセージを残した。サミーは、ヒーリングパワーを彼女に向けた。すると翌日、メッセージを残した人が急に立ち上がって、痛みが消えた、という。
「私には長距離ヒーラーの力があるの。」

実はボクはスーパーマンなんだ、
と言われたような、不思議な夕暮れ。

この古い町は、
「レイトン教授の不思議な町」みたいに、
謎なぞがいっぱいありそうで、
自分も昔の物語に巻き込まれていくような気がした。

見回すと、いくつものドアがあり、
こんなところに閉じこめられたら、叫んだって、誰もこない。
携帯電話のシグナルもゼロだ。
ウサギが来たら「不思議の国のアリス」だ。
蒸し暑くて、ジャケットを脱ごうとすると、
彼女はどうぞどうぞ、とばかりに、シャツも脱げ、ズボンも脱げ、という。
まるで「注文の多い料理店」、宮沢賢治の世界じゃないか。
これこれ、あんたが脱いでどうするの。
ベランダには、彼女が好きなスカンクが飼われており、たぬきみたいなスカンクは茶釜が似合う。スカンク茶釜、って昔話、ここならありえる。
壁にあるインドの女神たち、私にはアマテラスに見え、明日にでも太陽が天の岩戸に隠れるのを私は必死の覚悟でとめねばならない。スサノオが来ないよう、誰か、見張って!
プルーストが失われた時を求めたように、この町、住民、サミーは古いまんまの町に時間を逆さまに生きていたりして、、、。え、そしたらあたしも昔に戻るの?
あぁ、なんだか、ドキドキしてきた。

サミーは古代の霊気ヒーリングの話をまだ続けており、
白砂糖が人類を滅ぼす話のあたりで、
わしゃ帰る、と私は立って外に出た。
ほならおなら、
タイヤがパンクしてた。
はぁぁぁ、、、しゃあない、寝てこましたろ。私の芸名、3年寝たろうです。










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